JAWSとGMailのあれこれ

前書き

今時のWebアプリケーションの代表と言えばGMailかもしれない。あるいはGoogleドキュメントとかそういうものかもしれない。あるいはTwitterとかFacebookとかかもしれない。ひょっとするとエンターテインメント系のアプリなのかもしれない。とにかく、ブラウザの上でアプリケーションが動くというのは当たり前になっている。

これらWebアプリケーションは、スクリーンリーダーユーザーにとって、一般的には使いにくいと言われてきたものたちではないだろうか。これまでスクリーンリーダーは、ブラウザ上に固定的に表示された情報を読み上げることを想定して作られてきた。まさかアプリケーションが動いて、表示内容がころころ書き換わるようなことは想定していなかったのだ。

ずっとまえに、HTML5のアクセシビリティを考える集まりというものが企画されていたのだが、いろんな事情でなくなってしまった、と思う。その後同種の研究や情報交換や規格化は有識者の手で行われてきたし、そのような情報も探せば見つかることだろう。

さて、そういう少し難しい話は置いておいて、実際の所エンドユーザーにとってGMailをブラウザで使ったときと言うのはどの程度使いにくいのか、あるいは使いやすいのかということを考えてみよう。

この検証や私の感覚は、一般的ではないかもしれないし、私が知らないこともたくさんあるだろうと思う。そんなことはない、こんな技術が既にある、こういう研究がされている、なんていう情報があったらぜひ教えてほしい。

試した環境

私の環境をとにかく書いておこう。

  • OS: Windows 10 1803
  • ブラウザ: Google Chrome 71.0.3578.98
  • スクリーンリーダー: JAWS 2018

GMail

これまで簡易HTMLモードが良いと言われていたGMailだが、標準モードにはちゃんとスクリーンリーダー用のサポートが入っているし、とてもたくさんのショートカットキーが用意されている。これらが正しく機能したとすると、かなり使いやすくなることが予想される。

ただ、上述したようにスクリーンリーダーはページが書き換わらないことを想定していた。その書き換わらないページを「仮想バッファ」という状態でユーザーに提示している。メモ帳とかにこのバッファーの内用をコピペすると、実際の表示との差に、視覚的にコンピューターを使っている人は少なからず驚くことだろう。

この仮想バッファーの状態ではキーボード操作はページを読み取るためのキーとして使われている。上下の矢印キーはページを1行ずつ読む竹のキーとして使われる。ところが、GMailのショートカットでは上下の矢印キーはメールのリストを移動するためのキーとして割り当てられている、ごく自然な割り当てだ。

ということで、仮想バッファー状態とそうでない状態の二つを行き来しながらGMailを使うことになる、と言うわけだ。具体的にはこんな感じだろうか。

  • とりあえずGMailのページを表示する
  • InsertキーとZを押して仮想バッファーをオフにする
  • 上下の矢印キーでメールを選ぶ
  • Enterキーを押してメールの本文を表示する
  • InsertキーとZを押して仮想バッファーをオンにする
  • qキーを押してメインリージョンに移動する
  • 上下矢印キーでメールを読む
  • InsertキーとZで仮想バッファーをオフにする
  • Uキーを押すとメールのリストに戻れる

なんとも煩雑ではないか。それでも全てを仮想バッファー状態でやるよりは遙かに楽だ。メールの新規作成、返信、転送、フォルダの移動など、使いそうな機能にはショートカットキーが割り当てられているので、メールを読む以外のことは仮想バッファーをオフにして行うのが良いだろう。

最後に

私は日常的にGMailを使うことになっているわけだが、慣れの問題もあるのだろう、結局Emacs+Mewという20年以上使い続けているメール環境の方が作業効率が高いんだろうなと思っている。結局パソコンやスマートフォンは道具である。道具であるならば使い手が使いやすいと感じるものが最良なのだろうな。

とはいえ、こういうWebアプリケーションに対するスクリーンリーダーのサポートはかなり進化してはいる。もう少しブラウザ上で動作するアプリケーションとも仲良くしてみようかな。